約10年ぶりのアメリカ上陸。ニューヨークでの生活、写真。
by NYlawyer
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ロースクール的コーポレート・ガバナンス論~ステークホルダーの利益①
アメリカの株主・投資家が一般的に短期的な利益を追求しているかどうかは研究もたくさんあると思うが、前回までの議論で明らかにしたかったのは、アメリカの株主の中にも、短期的な利益を重視・追求する考え方と、長期的な成長・利益を重視・追求する考え方の両方が存在するということであった。
そこで、次に考えたいのは、株主とその他の利害関係者の関係はどう考えられているのかという点である。
日本でも最近、取締役は株主に雇われているのであるから、従業員や取引先等のステークホルダーの利益はともかく、あくまでも「株主利益・価値の増大」を追求しなければならないと、特に敵対的買収の局面において言われるようになっている。そして、これはアメリカ流の資本主義の影響を受けることで、あるいはアメリカに遅れることウン十年で、株主の方を向いた資本主義がようやく日本にも根付きつつあるという言い方がされる。しかし、このような言い方には非常に違和感を覚える。なぜなら、アメリカでの議論が「株価至上主義」「株主価値増大」一辺倒では全くないからである。
「株主の利益こそが最優先されるべきだ」、(敵対的買収の局面では)「マーケット・プライスよりも高い値段がオファーされたのであれば取締役会は買収提案に応じるべきだ」という主張を支えている理論は、(1)効率的市場仮説(Efficient Market Hypothesis)と(2)プリンシパル―エージェント・モデル(The Principal-Agent Model)である。
シンプルにまとめると、(1)効率的市場仮説によれば、株価はほぼ全ての情報を織り込んで形成されているのであるから、買収者の提案する買収価格>株価であれば(=プレミアムがついているのであれば)株主は利益を享受できるのであるから、取締役がこの買収に反対するべきではないということになる。
(2)プリンシパル―エージェント・モデルでは、株主と取締役は「本人-代理人」の関係に立ち、株主は会社に対する唯一の残余財産請求権者(residual claimant)であり債権者への弁済完了後に残った会社の財産(残余財産)は株主のものである、したがって株主利益増大イコール企業価値の増大、となる。
しかし、そもそもこの効率的市場仮説とプリンシパル―エージェント・モデル自体が再検証の対象となっており、非常にプリミティブな形での理論は到底受け入れられるに至っていない。実際、論者自身も理論の修正を余儀なくされている。
また、「株主の利益」と言うとき、どのような株主を念頭に置くのかという根本的な問題がある。
言うまでもないことだが、株主の中には「とーちゃん」「かーちゃん」株主(mom-and-pop shareholder)などの個人投資家から、非常に洗練された投資理論を用いて活動している機関投資家まで、非常に多くの種類の株主が存在している。株式保有に対する考え方を見ても、株価が上がれば早々に利ザヤを確定するつもりの短期保有志向の株主も、少しくらい株価が上昇してもすぐに売るつもりがない長期保有志向の株主もいるはずである。さらに、株主自身が投資を分散化している場合(ミューチュアルファンドや年金ファンドなど)と、分散せずに(できずに)一つの会社にのみ投資をしている株主もいるであろう。このような株主の分布状況を見ると、一口に「株主の利益になる」と言っても何も解決しないし、株主間で利益相反・利益衝突(Conflict of Interest)が生じる可能性が非常に高い。
また、株主以外の利益を考えるときには、従業員や取引先、地域社会など様々な利益・利害が存在しうる。
では、このように様々な利害が対立する株式会社のガバナンスを誰が担うべきなのであろうか。アメリカで見られる議論は、日本でも一部で叫ばれている「会社の所有者である株主、あるいは取締役が信認義務を負っている株主自身に決めさせろっ!」とか、「海の向こうのアメリカでは株主の利益のみが考慮されている」などという単純なものではなく、意外(?)なことに、取締役会こそが適任である、というものなのである。
日本人としては条文から出発したいところなので、まずデラウェア州一般会社法(DGCL)の141条(a)の第一文を見てみると、
とある。取締役会への中央集権(Centralized Management)を示す条文と説明される。
(続く)
そこで、次に考えたいのは、株主とその他の利害関係者の関係はどう考えられているのかという点である。
日本でも最近、取締役は株主に雇われているのであるから、従業員や取引先等のステークホルダーの利益はともかく、あくまでも「株主利益・価値の増大」を追求しなければならないと、特に敵対的買収の局面において言われるようになっている。そして、これはアメリカ流の資本主義の影響を受けることで、あるいはアメリカに遅れることウン十年で、株主の方を向いた資本主義がようやく日本にも根付きつつあるという言い方がされる。しかし、このような言い方には非常に違和感を覚える。なぜなら、アメリカでの議論が「株価至上主義」「株主価値増大」一辺倒では全くないからである。
「株主の利益こそが最優先されるべきだ」、(敵対的買収の局面では)「マーケット・プライスよりも高い値段がオファーされたのであれば取締役会は買収提案に応じるべきだ」という主張を支えている理論は、(1)効率的市場仮説(Efficient Market Hypothesis)と(2)プリンシパル―エージェント・モデル(The Principal-Agent Model)である。
シンプルにまとめると、(1)効率的市場仮説によれば、株価はほぼ全ての情報を織り込んで形成されているのであるから、買収者の提案する買収価格>株価であれば(=プレミアムがついているのであれば)株主は利益を享受できるのであるから、取締役がこの買収に反対するべきではないということになる。
(2)プリンシパル―エージェント・モデルでは、株主と取締役は「本人-代理人」の関係に立ち、株主は会社に対する唯一の残余財産請求権者(residual claimant)であり債権者への弁済完了後に残った会社の財産(残余財産)は株主のものである、したがって株主利益増大イコール企業価値の増大、となる。
しかし、そもそもこの効率的市場仮説とプリンシパル―エージェント・モデル自体が再検証の対象となっており、非常にプリミティブな形での理論は到底受け入れられるに至っていない。実際、論者自身も理論の修正を余儀なくされている。
また、「株主の利益」と言うとき、どのような株主を念頭に置くのかという根本的な問題がある。
言うまでもないことだが、株主の中には「とーちゃん」「かーちゃん」株主(mom-and-pop shareholder)などの個人投資家から、非常に洗練された投資理論を用いて活動している機関投資家まで、非常に多くの種類の株主が存在している。株式保有に対する考え方を見ても、株価が上がれば早々に利ザヤを確定するつもりの短期保有志向の株主も、少しくらい株価が上昇してもすぐに売るつもりがない長期保有志向の株主もいるはずである。さらに、株主自身が投資を分散化している場合(ミューチュアルファンドや年金ファンドなど)と、分散せずに(できずに)一つの会社にのみ投資をしている株主もいるであろう。このような株主の分布状況を見ると、一口に「株主の利益になる」と言っても何も解決しないし、株主間で利益相反・利益衝突(Conflict of Interest)が生じる可能性が非常に高い。
また、株主以外の利益を考えるときには、従業員や取引先、地域社会など様々な利益・利害が存在しうる。
では、このように様々な利害が対立する株式会社のガバナンスを誰が担うべきなのであろうか。アメリカで見られる議論は、日本でも一部で叫ばれている「会社の所有者である株主、あるいは取締役が信認義務を負っている株主自身に決めさせろっ!」とか、「海の向こうのアメリカでは株主の利益のみが考慮されている」などという単純なものではなく、意外(?)なことに、取締役会こそが適任である、というものなのである。
日本人としては条文から出発したいところなので、まずデラウェア州一般会社法(DGCL)の141条(a)の第一文を見てみると、
The business and affairs of every corporation organized under this chapter shall be managed by or under the direction of a board of directors, except as maybe otherwise provided in this chapter or in its certificate of incorporation.
とある。取締役会への中央集権(Centralized Management)を示す条文と説明される。
(続く)
by NYlawyer
| 2006-11-08 14:38
| Law and Business