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約10年ぶりのアメリカ上陸。ニューヨークでの生活、写真。


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HP取締役会をめぐるコーポレート・スキャンダル

ストック・オプションのバックデイティングの問題は、コーポレート・スキャンダルとしてはいま一つ盛り上がり(?)に欠けていたのですが、こちらは・・・

Hewlett-Packard Co.(HP)の取締役会をめぐるコーポレート・スキャンダルについては、先日の第一報を読んだときには何だか良く分からなかったのが、今日になっていろいろ追加情報が出てきた。

・今年1月、HP社取締役会に関する情報がマスコミに漏れた。
・HP社では、2005年の前CEOのFiorina(フィオリーナ)の解任をめぐっても情報漏えいが起きていた。
・内部者によるリークであると疑った取締役会議長のPatricia Dunn(パトリシア・ダン)が、今年の5月、誰がリークしているのか調べるよう命じた。
・HP社のGeneral Counsel(社内顧問弁護士のトップ)は外部の探偵事務所(agency)に誰がマスコミにリークしているのかを調べるよう調査を依頼した("pretexting"という手法を使ったとされる)。
・この調査に関して、外部の法律顧問はリテインされなかった。
・調査の結果、取締役の一人である Keyworth(キーワース)であると判明した。
・議長はキーワースを問いただしたところ、記者に情報を漏らしたことを認めた。
・HP社はキーワースに辞任を促したが、キーワースを自分は株主によって選任されているので勧告に応じて辞職することはしないと拒否した。
・取締役でキーワースの友人であるPerkins(パーキンス)は、この捜査手法に抗議して、取締役を辞職した。

まるで、ウォーターゲート事件か映画のワンシーンを見ているようだ。
「やっぱりアメリカの会社では取締役間での緊張関係がありカバナンスが作用している」という向きもあるかもしれないがそんな大そうな話ではなく、"It's a mess."という状況である。なぜなら各人がそれぞれミスを犯しているからである。
ここで、問題となる行為をピックアップしてみると・・・



まず、取締役(キーワース)が会社経営における秘密情報(取締役会での議事内容は通常、秘密情報であろう)をマスコミに漏らすことは、取締役の会社に対する信認義務(Fiduciary Duty)に反する行為である。

また、取締役が取締役の職務に関して違法な行為(ⅰ取締役会メンバーの電話やパソコンの個人情報へあるいはマスコミ関係者にアクセスした疑惑があり、ii裁判所の手続きを経ていない本件では、情報収集行為が違法とされる可能性が高い)を行うことは、これまた取締役の会社に対する信認義務(Duty of Loyalty)に反する行為である。その関係で、取締役会のメンバーが、探偵事務所が違法な手段で情報収集行為を行っているのを知ったのはいつか(もっとも、最悪の場合、会社の指示で探偵事務所が違法な態様の情報収集行為を行った可能性はあるのだが)が問題になるはずである。知った上で黙認していれば違法行為へ加担していることになる。

さらに、HP社は上場企業であるので、会社経営に関して一定の事項・事象・事実が判明した場合、適時に開示しSEC(アメリカ証券取引監視委員会)に届け出る必要がある。8-Kレポートは、事業及び活動、財務情報、証券取引市場、会計士及び財務諸表、コーポレートガバナンス等に関する事象が発生したときは、原則、発生後4営業日以内にこれをファイリングしなければならない。本件は良く分からないが、さしあたり、キーワースが会社と会社経営、方針等に関する何らかの事項について意見の不一致があることが理由で辞任しあるいは再選を拒んだ場合は、HP社による一定の情報の開示が要求されるという定めに抵触している可能性がある(Item 5.02. of Form 8-K)。

また、HP社が継続的にリテインしている(思われる)、シリコンバレーのトップファーム・Wilson Sonsini Goodrich & RosatiのSonsini(ソンシーニ)も、巻き込まれている。
どうやら、HP社が同事務所の継続的依頼者であるにも関わらず、HP社の取締役を既に辞職したパーキンスから相談を受けてこれに応じてしまっているようである(パーキンスには、Viet Dinhという前の司法省の役人でいまはGeorgetownロースクールの教授が付いているようだが)。Wilson Sonsini Goodrich & Rosatiは、2005年のフィオリーナ解任をめぐる情報漏えいについてHP社の依頼を受けて、調査を行っている。Wall Street JournalのBlogで、このソンシーニとパーキンスのコレポンが公表されてしまっているのだ。
Issue Spotting: Larry Sonsini’s Email Exchange

詳しい情報は良く分からないので上記情報を元にすると、会社(取締役会)によってリテインされている弁護士・法律事務所は会社(取締役会)に対して信認義務を負い会社に対してアドバイスを行わなければならないが、もし上記メールのやり取りが本当だとすると、ソンシーニは依頼者であるHP社ではなく、パーキンス個人にアドバイスしているから、HP社との関係で信認義務違反の責任及び弁護士倫理規定違反の責任(Professional Responsibility)を負うことになろう(この責任の有無は、HP社の捜査が適法であったか否かは関係ないから、ソンシーニは追い込まれる可能性がある)。カリフォルニア州法は別かもしれないが、全米レベルのコンフリクトのルールからすれば、彼はHP社の法律顧問を辞任することになると思われる。

報道機関はHP社に対して厳しい論調を張っているし、パトリシア・ダンの辞任を求める声が強い。このような強い批判の裏には、自社の記者たちが情報収集行為・盗聴の対象となっていたこともある。また、HP社のビジネスが個人情報と密接に関連するものであることを理由にする記者もいる(Patricia Dunn should resign as chairman of HP)。

さらに、9月11日が近づいているというタイミング、あるいは、ブッシュ大統領が「テロとの戦い」を理由に無令状でのCIA/FBIの盗聴を認める方針を打ち出しており言論の自由・プライバシーに対する議論が高まっている最中であることが影響しているのもおそらく間違いはない。
もっとも、もちろん、国家権力による盗聴と一探偵事務所による盗聴(if any)ではレベル間が違うのであるが、ブッシュ政権の情報管理には協力する一方で、一企業に対しては強い態度で出るマスコミのダブル・スタンダードも、ひょっとしたら今後問題になるかもしれない。

HP社が、SECに届け出た8-Kレポート①
HP社が、SECに届け出た8-Kレポート②
pretextingによりコンピュータのアカウントや接続状況にアクセスしたものを割り出すためのカリフォルニア州司法長官が取った捜索令状と宣誓書
HP取締役会をめぐるコーポレート・スキャンダル_e0036628_5291621.jpg

by NYlawyer | 2006-09-09 05:24 | Law and Business